USコンバースの並行輸入がほぼ完全にできなくなりました。USコンバースは正規品であっても、日本においては偽物であり輸入できません。このある種理不尽な現状について今回はまとめ、消費者として求めるものを主張してみたいと思います。
コンバースの歴史
コンバースは1908年にアメリカのマサチューセッツ州で創業されたラバーシューズメーカーです。
1917年にバスケットシューズとしてオールスター、1935年には名作ジャックパーセルを世に生み出し、その後もワンスターやウエポンといった傑作をリリースしてきました。
その傍らで、オールスターはファッションアイテムのマスターピースとして世代を問わず愛されるブランドに成長していきます。そしてもちろんこのころのコンバースシューズはすべてMade in U.S.A.
2001年倒産
順調にブランドを育てたコンバースですが2001年に倒産。栄枯盛衰とはよく言ったものです。しかし、世界的ブランド力のあるコンバース、各国から資本提携の手が差し出されコンバースブランドの継続がなされます。
日本からの資本提携は伊藤忠商事
日本からの資本提携は伊藤忠商事によってなされました。伊藤忠の協力は強大でコンバースは無事窮地を脱出することができました。伊藤忠商事は日本での流通の権利を取得しコンバースジャパンを設立します。経営再建の過程で、伊藤忠商事は日本での流通の権利を取得し更に、旧コンバースの靴に関する商標権が新コンバースに譲渡されるとその商標権も取得します。
これにより、我が国における「コンバース」の商標権は伊藤忠商事のものとなりました。伊藤忠商事は当然日本における「コンバース」ブランドのスニーカーの製造、販売を開始します。
2003年ナイキが米コンバースを買収
2003年突然ナイキがUSコンバース全体の買収します。ナイキの傘下に入った新USコンバースは、伊藤忠商事との資本提携を解消。コンバースの製造、販売の権利はナイキ傘下の新USコンバースとなります。ここで米コンバースとコンバースジャパンは全く関係のない会社になりました。
輸入販売業者ロイヤルの登場
2003年以降日本の消費者はUSコンバースを買うことができなくなりました。しかし消費者の中にはUSコンバース系譜を継ぐ商品を求めるファンが沢山いました。
そこで輸入販売業ロイヤルがUSコンバースの正規品を独占輸入販売できる契約を結び、並行輸入販売を始。
ロイヤルは正規品の並行輸入販売を合法的に行う会社です
1973年(昭和48年)に株式会社ロイヤルサービスとして海外の著名なスポーツ&カジュアルブランドの商品を、独自のルートを通じて”本物(純正)”の商品にこだわって市場に提供する直輸入販売(いわゆる並行輸入業)の草分け的存在として事業をスタートさせました”
ロイヤル会社案内より
ここまでが権利者が別々になった流れです。
当然もめます。
裁判の開始
伊藤忠商事がロイヤルの権利侵害に関して裁判に出ました。
伊藤忠商事の主張は
商標権の効力として、指定商品と同一、類似の商品の輸入販売を禁止できる。伊藤忠は単純にロイヤルの輸入販売を禁止できることになります。
しかし一方でロイヤルは
「本物」を輸入販売する行為は、原則として「真正品の並行輸入」として認められる行為です。
として権利侵害ではないと主張しました。
双方が主張する形になり、東京地裁、高裁で争われ2010年4月に伊藤忠の全面勝利で結審しました。これにより海外で製造されるコンバースシューズは日本においてはすべて偽物であることが確定。税関でのコンバース狩り(没収)が始まりました。
裁判結審後起こったこと、起こること
このころ海外で正規品であるコンバースシューズが次々と税関没収、廃棄されました。海外の権利者からなぜ本物なのに輸入出来ないのか?という問い合わせが頻繁に来たことを覚えています。(説明は苦労しました・・・)
また2022年10月1日の関税法改正により個人輸入で業者から購入する偽物も没収の対象になりました。よって現在コンバースシューズを海外から輸入することは殆ど不可能になっています。
この結果でもやもやしていること
まず前提として、知的財産は権利者が膨大な努力を重ね作り上げてきたものです。しかし簡単に複製され侵害されるのも事実。しっかりと守られなければならないものと自分は考えます。
ですので、この裁判で伊藤忠商事が悪いという風には思いません。ただ裁判の主張と認められた結果でとても気になることがありました。
伊藤忠側は一連の裁判で「日本のコンバースは米国コンバースとは異なる独自のものだ」という主張を繰り返し行っているように読み取れます。裁判所はそれを認め全面勝訴。
しかし現在のコンバースジャパンのサイトを見ると1908年に創業されたコンバースが受け継がれているようにアピールがされています。また伊藤忠ブランドで生産体制や商標権者が変わっていることも書かれていません。BRAND HISTORY | CONVERSE コンバースオフィシャルサイト
理由はおそらくUSコンバースのブランド力が大事、ということではないかと思います。
コンバースシューズってUS産って思っていません?
実際昭和生まれの私たちの世代ではコンバースシューズ=USAなんですよね。今の若い方はわかりませんが、日本で企画され、製造されているなんて全然知りませんでした。自分の通関する靴が没収されるまでは。
ですので、正直なところ知らずに買っている間は、なんだか騙されてた・・・というのが個人的感想でした。USコンバースとコンバースジャパンの商品は実際結構違いますし、違うからこそUSコンバースが欲しい消費者も沢山いるのではないかと。
当時、かなりの日本人がコンバースジャパンの商品ではなく、コンバースUSAの本物の商品が欲しかった。ということはないでしょうか?正直当時は知らずに騙されて買ってしまったような、なんだか納得が行かないもやもや感。
伊藤忠商事の手助けなしでは生き残れなかった
しかし伊藤忠商事の手助けがなければコンバースは息絶えていたかもしれません。そこで伊藤忠商事側が手をかけ、お金をかけ救ったのは事実。権利を得たのも事実。そこも忘れてはいけないですよね。
USコンバースの並行輸入は実現する?
残念ながらUSコンバースシューズを輸入して楽しむことができません。今後唯一USコンバースを輸入することができるようになるとするなら、伊藤忠商事が並行輸入をする、ということだけが消費者にUSコンバースと届ける道ではないかと思います。。
しかし、残念ながらそんなことは当然起こらないでしょう。
この結果でよかったのか?
商標権は商標を持つものを守るための大切な法律。確かに商標違反の商品を見ない日はありません。企業が作り上げたブランドですからそれを大切に保護しなければならないです。しかしこの裁判では本物とされるものが日本では偽物として廃棄されてしまう。消費者はその偽物とされた本物が欲しいが手に入らない。これでよかったのか・・・仕方ないのか・・
答えは出ないですが、伊藤忠商事がUSコンバースの輸入販売の権利取得してコンバースジャパンと並べて販売してくれるウルトラCの実現を期待しています。
コメント
ぶっちゃけて言うと伊藤忠商事のコンバースの方が偽物ですけどね。
当て布も無い、インソールもペラペラのいい加減な物作ってそれが本物だは無茶苦茶な話。
何故伝統を守ろうと言う信念が無いのか。