コラム:海外通販の偽物摘発が強化されます:根拠、予測、抜け穴は?

コラム

海外通販のコピー商品取り締まり激化が始まる?

いろは
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2022年10月1日より海外通販に対するコピー商品(偽物)の取り締まり強化が始まります。

強化される理由は、摘発没収の根拠となる法律の整備がされたからです。

コピー商品取締まりの法律改正

商標法:2022年4月施行
関税法:2022年10月施行

これにより、海外通販の偽物を摘発することができるようになりました。

法律整備以前の状態

今までは商標法の規定により個人使用(業として輸入しない場合)の場合、実質的にコピー商品(偽造品)の輸入ができる状態でした。

もちろん個人輸入と偽って大量の偽ブランド品を輸入しようとするケースでは摘発される事もありました。また個人でも税関から偽物認定をする書類が届くケースもありました。

しかし弁明をすれば輸入することが可能で、個人の海外通販などでは実質的に取り締まりができない状態となっていました。

商標法の改正により、「海外の事業者が業として偽物を持ち込ませようとする行為」が商標法違反と規定されました。また関税法改定でそれを取り締まる方法、例えば”輸入する者にどんなルートで購入したのか?など聞き取れる権限”も整備されました。

詳しくは個人使用の偽物も税関没収へ:衝撃のルール変更で起こることをの記事で解説しています。

税関が取り締まりを強化する根拠:改正は税関の悲願?

いろは
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個人的には海外通販のコピー商品に対する税関の取締りは相当強化されると考えています。

個人使用貨物に関する知的財産権侵害の法律改正は権利者の悲願で、また行政サイドからも法改正を強く望む声が出ていました。

特許庁の記録として以下の文書も残っています。

認定手続において、「争う旨の申出」が平成26年以降、3千件以上の高い水準で推移しており、その大半は「個人使用主張」。
結果として、模倣品の流入増加に歯止めをかけることができていない。

模倣品の越境取引の問題について、何らかの措置を講じるべきではないか。

特許庁:模倣品の越境取引に関する規制の必要性について

税関としても偽物と確証を持って認定手続きを開始を意気込んでも、個人使用という主張のため認定できないケースが多数あり、この法律改正を強く望んでいました。

侵害物品の没収件数

2021年度に知財没収された商品数は28,270件(819,411万点)。
個人輸入に関するデータはありませんが個人輸入が多い国際郵便で摘発された件数は約2.5万件、40万点にも上ります。

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ちなみに摘発された商品の発送地域は90%以上がアジアでした

侵害物品の言い逃れ件数

公表されているデータではここ数年3,000件~5,000件について、「個人使用」であるとの意見書が提出され没収を逃れていることが分かっています。15年前は平均100件以下でした。

個人で簡単に海外通販ができるようになったことが個人使用主張の最大の理由のようです。しかし、最近はネットやSNSの普及で個人使用であれば「言い逃れ可能(没収を避けられる)」という情報が共有されていることも意見書の増加につながっているようです。

今後さらに個人の越境通販は増加することが考えられ、権利者、行政双方が【取り締まりの根拠】を整備したいという機運が高まっていました。

いろは
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悲願の法令改正です
税関にノルマがあるのかについてはわかりませんが、
税関は徹底的に取り締まりを行い成果を強調したいはず

今までスルーされていた偽物も狙われる

今までスルーされていたコピー商品

少し表現が難しいですが、今までスルーされていたコピー商品の摘発も強化されると考えています。税関といえども”人員”は有限です。できるだけ効率よく反則貨物を見つけ、没収、摘発につなげたいはず。

その中で個人使用の偽物については言い逃れをされる状況でした。このため、数が少なければ・・、作りの悪い偽物なら・・とスルーされていた案件もあったと思います。(これは仕方ないのかなと思います)

しかし今後は没収、廃棄を言い逃れる根拠が極めて狭められました

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海外通販で偽物を見つければすべて没収(税関の実績)になるわけです。

また法令改正後に海外通販での取り締まり件数が増大することでニュース性が高まり世の中に取り締まりについて広く認知させられるインパクトも与えられます。

そういう理由で、今まで税関から認定開始通知書が届かなかった商品に対しても、今後は偽物認定の対象になる可能性が広がると睨んでいます。

いろは
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安易に偽物に手を出すと商品すべてを没収されます

没収されない抜け道はあるのか?

没収されない抜け道は?

個人間取引は今回の法改正の対象外

今回の改定で「海外の事業者が業として国内に偽物を持ち込むこと」に対し商標法違反という根拠が与えられました。よって、個人間の取引にこの法律は適用されません

取引が個人間の取引の場合、これまで通り意見書を提出し税関に認められれば輸入することが可能です。ただし、税関は個人間取引かどうかの確認を個人に求めることが可能になり、輸入者自身が個人間取引であることを証明しなければなりません

証明ができなければ没収の対象になります。

例えばB2BサイトではなくC2Cでの取引を裏付ける資料及び譲渡人が非事業者であることを裏付ける資料の提出が想定されます。

いろは
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抜け道のハードルは高くなりました

コピー商品での失敗をしないために

騙されても商品は没収される

今まで書いてきたようにこの法整備は、権利者、税関の長年の悲願であるともいえます。

輸入者側としては偽物かな?と思って購入してしまう人もいたでしょう。また海外通販で知らずに偽物を掴まされた被害者という立場の人もいたでしょう。たしかに被害者としての側面もあり、今までは摘発や、没収を逃れた側面もあったはずです。

しかし、今後は海外通販の偽物は騙されたケースでもすべて没収されます。購入者としては代金の返金も商品も受け取れず、税関には偽物を輸入しようとした履歴だけが残ってしまい泣き面に蜂状態です。

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今後は絶対に偽物を買わないようにしたいところ。

海外通販で偽物を掴まされない方法

海外通販で偽物をつかまされないようにするのは簡単です。
販売店でなく、販売サイト自体が正規品に保証を与えているサイトから購入すればいいのです。

例えば韓国コスメを買いたい場合はQoo10のようなショッピングモールサイトではなく、スタイルコリアンのような専門モールまたは公式ショップを選択します。専門店モールや公式サイトは、若干値段は上がりますが、これで偽物被害はゼロになります。

これはQoo10が悪いというのではなく、比較的簡単に出品できるショッピングモールサイトには偽物が混ざる。それを完璧に判別する手段は消費者にはないという、仕組みの問題だと考えています。

筆者は他のECショッピングモールサイトも同様に偽物は混ざると思っています。長年貿易の仕事にかかわった経験談として海外通販で偽物に騙されない買い方にまとめましたので参考にしてください。

2022年10月1日以降、どんなペースで個人の海外通販のコピー商品が摘発されていくのかが大注目です。

この記事を書いた人
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いろは

貿易のプロ【通関士】として20年のキャリアがあります。扱ってきた商品は数万件、数千種類以上。法人、個人事業主、個人通販すべて対応可能です。仕事以外で個人的に海外通販も楽しんでいます。最近個人の海外通販(個人輸入、輸出)が激増して色々な質問やトラブルが増えました。このブログでは個人の方が安心して海外通販を楽しめるように、規則、手順、安全なサイト、本物の商品の見つけ方を発信しています。個別の質問も受けてていますのでお問い合わせからメールしてください。匿名可能です。

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